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  • 執筆者の写真K.Matsui

「自我」とは何か?

更新日:2023年4月30日

【自我の定義】


「わたしとは誰なのか?」

この問いに対する最もシンプルな答えが、今回取り上げる「自我」です。


辞書を開くと、「自我」は一般的に「自己」や「自分」のこととされています。

また、哲学においては「天地一切のものに対する自分」や「エゴ」などと表現されます。

更に心理学では、「自分自身に対する、各個人の意識・観念」と言われます。

要するに、いま、あなたが思う「自分」のことです。


では、その「自分」とは何でしょうか?

そもそも「自我」を定義するにあたり、類義語である「自分」という言葉を使用すると説明が循環してしまいます。

上記の定義は「自我」の特質を述べているだけのようです。


このブログでは「自我」を次のように定義します。


「自我」とは、過去の「意識」情報の蓄積を含む「脳内世界モデル」に対する連続的クオリアである。


瞳の中の自我

【圧縮される過去】


「意識」は、あなたの「脳内世界モデル」が作り出す「時間一方向進行性・時空局在性」を有するクオリアのことでした。

つまり、「意識」は「脳内世界モデル」の中に「今ここ」を現象します。


しかし、「今ここ」は時間の経過と共に、次々と過去へ向かって流れていってしまいます。

ある瞬間の「今ここ」の「意識」は、次の瞬間には過去にあった「意識」の「情報」に変わってしまうわけです。


赤ちゃんの時とは違い、あなたは既に完成された「記憶回路」を持っています。

過去のものとなった「意識」は「情報」として「脳内世界モデル」に蓄積されていくことになります。


この「情報」は時間の経過と共に劣化すると言われています。

あなたは、去年の夏休みにバーベキューの肉を焦がしてしまったことは覚えていても、小学校の卒業式の記憶は曖昧です。


何故「情報」は劣化してしまうのでしょうか?

「記憶」は容量が決まっていて、新しい「情報」が入って来るたびに、古い情報を消失しているのかも知れません。


しかし、あなたは、何らかのタイミングで過去の情景が鮮明に蘇ったという経験をしたことはありませんか?

これは、どう説明したらよいのでしょう。

どうやら、過去の情報は「消失」するのではなく「圧縮」されているだけのようです。

何故なら、圧縮した情報は復元することができるからです。


更に、この「圧縮」は積極的システムとして構築された可能性があります。

何故なら、あなたのDNAに仕組まれた「種の保存可能性増大」の命題が、過去の情報より現在または現在により近いところの情報を優先するからです。


過去の情報は、その要旨だけを残して詳細を圧縮していくことで、情報へのアクセス時間をより短くすることができるため、より効率的な判断処理を行うことができます。


例えば、あなたが暗いトンネルの中で暴漢からナイフを突きつけられた時、あなたは即座に暴漢を撃退するか、暴漢から逃げるかの選択を迫られます。

この時に、あなたが幼い頃ナイフでリンゴの皮むきをしたこと、美味しいリンゴの味、勝手にナイフを持ち出して母親に叱られたことなどを止めどなく思い出すようだと、命を危険に晒すことになるでしょう。


【意識と自我の関係】


話しを「自我」に戻します。


蓄積された過去の「意識」情報を含む「脳内世界モデル」には、あなたが物心ついたころ、つまり記憶が始まった過去から、現在に至るまでの情報が全て並ぶことになります。


そして、過去から現在までを連続した一続きの「意識」として同時に感覚するクオリアこそが「自我」なのです。


このような「自我」の発生過程から、その特質である「自分」という主体性が現れます。

「意識」は「脳内世界モデル」全体を主体とし、「あなた」はそこにはいなかった。


しかし、「過去の意識」から「現在の意識」に至るまでの連続性を認識することにより、そこに「主体の同一性」が確認された。

言い換えれば、過去から現在に至るまでを、いっぺんに俯瞰する存在=自我に気付いたということです。


この「自我」に至って、ようやく主体としての「あなた」が登場することになります。


ちなみに、「自我」は「意識」と同じ「第三の脳」で現象します。

何故なら、「自我」は「意識」の連続体であり、同じカテゴリーにあるからです。

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