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意識と世界

執筆者の写真: K.MatsuiK.Matsui

更新日:2023年4月30日

【意識とは何か】


あなたは、今、この文章を読んでいます。

よって、あなたには「意識」があると言えるでしょう。


一般的に「意識」とは、「起きている状態にあること」または「自分の今ある状態や、周囲の状況などを認識できている状態のこと」と言われています。


「意識」を含む「心」の構造論は中世の哲学者たちの主要なテーマとなり、やがて心理学へと、その舞台を移していきました。


しかし、「意識」は科学的な解明が最も遅れている分野のようにみえます。

何故か、科学者達は「意識」に対して何かしらオカルトな話題でも扱うかのような慎重さで臨みます。


「AI技術」など、「意識」を再現しようとする試みもありますが、それは単純に「人間のように受け答えができる」機能を目指しているという事であり、「人間の意識」そのものの探究とは異なります。


科学者ですら敬遠する「意識」とは何なのでしょうか?

突然ですが、このブログでは「意識」を次のように定義することにします。


「意識」とは、あなたの「脳内世界モデル」が作り出す「時間一方向進行性・時空局在性」を持つ「クオリア」である。


何を言っているのでしょう。

それでは、一つずつ見ていきます。


「脳内世界モデル」とは、あなたの身体が捉えた内部外部情報を用いて脳内に構築される、あなたなりの「世界」のモデルのこと。


「時間一方向進行性」とは、時間軸を「未来」方向へ自動的に進行していく性質。


「時空局在性」とは、物質が「一つのパターンの宇宙の一つの時間と場所に存在する」性質でした。


そして、「クオリア」とは感覚的体験に伴う独特で鮮明な質感のことです。


少年の意識は何を見るのだろう

【意識とデコヒーレンス】


本来的に「重ね合わせ状態」である世界が「観測」によって「たった一つの宇宙」に収縮してしまう「デコヒーレンス」。


その原因は「観測」の主体である、あなたの「意識」にありました。

何故なら、あなたの「意識」は、常に「今ここ」という「時空局在性」を持つからです。


つまり、本当は沢山あるのに、その内のたった一つしか見えないように、あなたは作られている。

別の言い方をするなら、∞の宇宙からなる世界は常にコヒーレント状態であり、何一つ変わらない。

しかし、あなたの「意識」というレンズを通すと、あなたにとっては、それがデコヒーレント状態の世界に映るということ。


そうであれば「意識」・「対象を観察すること」・「デコヒーレンス」は一体不可分の関係ということになります。


そう、あなたの「意識」と「デコヒーレンス」は表裏一体なのです。


ところで、「生命」は物理的作用を原因として発生する「現象」に過ぎません。

当然、「生命」から派生して生じる「意識」も「現象」であり物理的実体ではありません。


例えば、あなたは水面上を進む「波」を見ることができますが、それは、風力などのエネルギーが水の分子に作用した結果、形となって現象したものです。


この時、物質として存在しているのは「水」だけで、「波」という物質が新たに作り出されたわけではありません。


「現象」は、一般的に「ある物事が、違う形として現れること」とされます。

つまり、「現象」という概念の基底には「一方向の時間軸」が存在することになるのです。


何故なら、最初に「ある物事」があって、次の段階で「違う形として現れる」という「過去から未来への時間の進行」が織り込まれているからです。


よって、「現象」である「意識」にも「過去から未来への時間の進行」を意味するところの「時間一方向進行性」が織り込まれていることになります。


【意識の住む場所】


あなたの「脳」の外周を取り巻く部分は大脳新皮質(前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉など、また側性的には右脳・左脳)と呼ばれ、あなたの思考の中枢を担っています。


この部分は進化上、最も新しい「脳」です。

このブログでは「第三の脳」と呼ぶことにしましょう。


あなたの身体の感覚器官で捉えられた内外情報は「第一の脳」と「第二の脳」という「無意識の領域」において自律的に処理され、その情報の内の一部は「第三の脳」に送られます。


そして、その情報を処理する過程で、神経細胞達が発する電気信号のパターンこそが、あなたが「意識」として感覚するクオリアです。


では、その「意識」を感覚している「あなた」は何処にいるのでしょうか?


「無意識」の領域では、あなたは、あなた自身を見つけることができませんでした。

何故なら、「意識」がないからです。


それならば、「意識」の領域では、「意識」があるのだから、あなたは自分自身を見つけることができると思うかもしれませんが、残念ながら、まだ「あなた」を見つけることはできないのです。

何故なら、「意識」は「わたし」という主体を持たないからです。


例えば、あなたが何か「考え事」をしながら、自動車を運転して家に着いた時、「あ、もう家に着いていた!」と驚いたとしましょう。


この間、自動車を運転していたのは、あなたの「無意識」です。


その証拠に、あなたは帰宅するまでの道のりで経験したであろう、交差点での信号待ちの情景や、街路樹の葉の色、けたたましいエンジンの音、ほのかに香っていたはずの車内の香水の香りもハッキリと覚えていません。

自動車を運転していた事実もです。

記憶にあるのは、「考え事」の内容だけ。


一方、あなたが自動車マニアであり、運転することが大好きだったとします。

あなたは、家路に向かう間、自動車を運転することに夢中です。

我を忘れて、ハンドリングを楽しんでいます。

そして、家に着いた時、あなたは運転してきたことをハッキリと覚えています。


しかし、運転に夢中になっている最中、あなたは「自分の存在」を果たして認識していたでしょうか?


そうです、運転に夢中になっている時の、あなたの頭の中は「運転することが楽しい世界」でいっぱいで、「自分の存在」にも気づきません。


この時、運転していたのが「意識」です。


つまり、「意識」は「あなた」ではなく、あなたの「脳内世界モデル」全体を主体として認識してしまうのです。


あなたの「無意識」はコヒーレント状態である、実在としての世界全体を住処としますが、


一方「意識」は、デコヒーレント状態の「脳内世界モデル」全体を住処としているのです。

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